プログラミングノート

一からものを作ることが好きなエンジニアの開発ブログです。

アプリ開発会社を売却した話

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先日、AppStair株式会社を株式会社メタップスに売却しました。
創業から4年でのバイアウト(弊社的にはセルアウト)になりました。

AppStairは前職時代に個人で開発していたアプリ(Best Album)をフルタイムで開発してみたいという理由から創業した会社で、何かイノベーションを起こしたいというスタートアップ的な大きな志があった訳ではなく、日々の生活をちょっとだけ幸せにしたいという想いで経営してきた会社です。

資金調達は行わず全て自己資本で、社員は雇わず妻と2人でやってきました。形態としては法人ですが、フリーランスのエンジニアと言う方が実態に即していたかもしれません。拡大しようかなと思った時期もありましたが、自宅の1室でユーザーのことだけを考えて延々と開発できる生活が快適で止めることが出来ませんでした。

事業としてはよくある形だと思いますが、自社アプリ開発と受託開発を行ってきました。起業資金は300万円とあまり余裕がなかったこと、これまで自分の作ったサービスで生活出来るだけの資金を稼いだことがなかったことから、アプリで如何に稼ぐか(マネタイズをどうするか)を創業以来ずっと考え続けてきました。

自社アプリで効率的かつ安定的に収益を出すにはどうすればいいのか、ユーザーの方にお金を払ってもらうにはどうすればいいのか。個々のアプリについて語れることは沢山ありますが、この辺りは前職のクックパッドでの開発経験がとても役に立ったと思います。

開発した自社アプリは写真アルバムや動画のツール系を中心に10数本だったのですが、幸いなことに3割くらいがヒットと呼べる感じに成長しました(会社の規模によりヒットの定義は異なると思いますが、AppStairでは1アプリで50万DLとか、月30〜50万も売り上がれば十分にヒット)。

アプリの売上はツール課金が9割、広告が1割という感じでしたので、プロダクトを磨き込めば利用者も売上も増える(プロダクトのことだけを考えれば良い)という非常に良い循環で運営出来ていました。開発方法に名前を付けるとすればレビュー駆動開発的なもので、日々アプリに寄せられるレビューを妻がチェックしてそれを元に機能改善や新しいアプリを生み出して行く、というやり方でした。


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(中々全アプリ改善に手が回っていませんが、多数のアプリで☆4.5を維持しています)


現在は全アプリで700万DL程になりましたが、自宅の1室で開発している個人がこれだけの人の生活に少しながら影響を与えられるというのは良い時代だなと思います。最近は個人開発者の時代は終わった的なことが言われていますが、個人的にはまだまだ入り込める余地があるのではないかと考えています。(やるかどうかは別として)


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(月間のDLと売上のざっくり推移)


もちろん上手く行くことばかりではなく、中には予算をかけて開発したのに売上が全く上がらないとか、新規事業として知人と初めた別のスタートアップを2社潰したりとか、失敗も多々ありましたが、挑戦しないことには失敗できないので、今となっては良い思い出です。

受託開発の方は主に前職時代の知人にご紹介頂き、ゼロからのアプリやウェブ開発を楽しくさせて頂きました。特に葛本さん、成松さん、小竹さん、森下さん、関さんにはとてもお世話になりました。大きなお仕事も頂きまして大変助かりました。ありがとうございます。

スタートアップにおける受託開発の是非についてはよく議論される所だと思います。後から振り返ると、もっと自社アプリに注力しておけば良かったなと思うこともありますが、安心して生活を続けて行くために少しでもキャッシュを稼いでおきたいという不安は常にありましたので、自己資本での企業経営であれば受託をやらないという選択は中々出来るものではないなと思います。

このような形で法人の設立からは3年9ヶ月、アプリと受託の2本柱で業績としては黒字経営で順調に推移していたのですが、動画事業を一緒に伸ばしていきませんか、とのお誘いをメタップスで働いている知人経由で頂いたことをきっかけに大きく方針転換することになりました。

AppStairとしては自社で投資して十分に伸ばしていくこともできたのですが、これまでとは環境を変えて順調に成長している事業をトップスピードで伸ばすのはまた一つ大きな挑戦だと考え、ご一緒させて頂くことに致しました。

まだまだ事業統合が終わったばかりでどうなっていくかは分かりませんが、まずはこの1年を乗り切って行きたいと思っています。一緒に開発してみたいというアプリエンジニア、サーバーサイドのエンジニアの方がいらっしゃいましたらFacebookにてお気軽にコンタクトして頂ければと思います!